空をなくしたその先に
それからゆっくりと手を伸ばして、ケースを取り上げる。


「もっと早く渡せればよかったんだけどな。

ヘクターがあんなことになって、君のことを誰も教えてくれなかったんだ。

ずいぶん探したんだけど、見つからなくて」

「あたし、つい最近まで入院していたから」


取り上げたケースの蓋をぱちりと音をたてて閉じると、ダナは掌に包み込むようにした。

ぎゅっとケースを握りしめる。
照れくさそうに立ち上がりながら、フレディは笑った。


「……重かったよ、その指輪は。

これで服の型くずれを心配しないですむ」

「ずっと持ち歩いてくれていたの?」


「いつどこで関係者に出会うかわからないだろ?

俺、アーティカにつながりないから、つながりある人間に会ったら聞こうと思ってさ」

「……ありがとう」

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