空をなくしたその先に
「どんな話?」


たずねるダナの声から、フレディに対する不信感は消えていた。

フレディが困った顔をする。


「……そうだな、ま、女がらみってやつだ」

「……」

「あいつの口から出てくるのは、君と……

サラって人くらいだったぞ」


言い訳をしたつもりがなっていない。

もう一人出てきた名前を聞いて、くしゃりとダナの顔がゆがむ。


「すまん、サラって人には恋愛感情はなかったと思うぞ?」


誤解したフレディが慌ててなだめようとする。


「そうじゃなくて……あたしは大丈夫」


慌てて涙を拭って、自分に言い聞かせる。

思いがけないところで出てきたサラの名前に動揺しただけだ、と。

対峙したリディアスベイルの甲板。

迷うことなくこちらに向けられた銃口。

あの時のサラの悲痛な声が、ふいに耳によみがえった。

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