空をなくしたその先に
手の中のケースが、熱く感じられる。

まるで存在感を主張しているかのように。


「とにかく今日は休め。

予定していたルートは使えないしな。

明日出発できるかどうかもわからん」


フレディに元の部屋に戻されて、ダナはため息をついた。

ケースの蓋を開いてみる。

中央に輝くエメラルド。

それほど大きな石ではないではない。

若輩の身で、大金など持ち合わせていなかったヘクターのことだ。

おそらく高価な品ではないのだろう。

それでもゆらすたびに本物しか持ち合わせていない光を放つ。

「あたしの目、こんな色してた……かな」


ヘクターがいたあの頃は、

こんな色をしていたのかもしれない。

クーフの平凡な日々の生活も。
撃ち交わされる弾丸の間を駆け抜ける日々も。

ヘクターが一緒なら輝いて見えた。

彼が全てだった。

あの頃は、きっとこんな色だったのだろう。

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