空をなくしたその先に
遠慮がちなノックがした。


「どうぞ」


入ってきたディオは顔色が悪かった。

ダナの顔に痛々しそうな視線を走らせて、

所在なげに入ってすぐのところに立ちすくんでいる。


「ダナ……えっと、その……ごめん……」

「ディオ」


ダナはディオの詫びを断ち切った。

ディオが謝る必要なんてない。
当然のことをしただけなのだから。


「あたしは大丈夫だから。

だから一つ約束して」


これだけは言っておかなければならない。

二度とこんなことがないように。


「何を?」

「今度同じことがあったら、全力で逃げるって。

あたしを置いて」

「……それはできないよ。だって」

「ディオ」


ダナの声が厳しくなる。


「あんたはいずれ王様になるんでしょう?

だったら、あたしを見捨ててでも、自分が助かることを考えなさい」

ディオの顔が凍りついた。

それ以上、何も言わないままダナの部屋から出ていく。

半分扉を開けたまま。

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