空をなくしたその先に
彼女は首の後ろに手をかける。

今日は真珠のネックレスに重ねて、
ルビーのペンダントをしていた。

その留め金を外し、ルビーはテーブルの上に投げ出して、鎖をダナの手に握らせる。


「この鎖に通して、首にかけておいたらどうかしら」

「でも」

「部屋に戻れば、似たようなものはいくらでもありますもの」

にこりとして言われれば、断ることなどできない。

ケースから取り出したそれを鎖に通して、イレーヌが首の後ろで留め金をかけてくれる。

「どなたからなのかしら?きっと大切な人からなのね?」

「……」


返す言葉が出なくて、ダナは口を閉じる。


「そんな顔をできるって幸せね」


意外なことを言われて、ダナの目が大きくなった。

亡くした過去に向き合わなければならない今の自分が、

幸せな顔をしているようには思えないのに。
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