空をなくしたその先に
二年前、飛行島に激突して沈んだ船と同じ名。

ビクトールは、あれから最初に建造した船に同じ名前を付けてサラに与えた。

あの時はこんなことになるなど思ってもみなかった。

あのままアーティカでビクトールの副官として一生を終えるつもりだったというのに。

後ろから、追いかけてくる足音がする。


「……ライアン。寝ていれば、と言ったはずだけれど?」

「俺はお前の部下じゃないしな。言われたことに従う義理はないさ」


ライアンと呼ばれた男は、あくびをするとサラと並んで歩き始めた。

黒い髪といい、堂々たる体格といい、アーティカの団長父子を思い起こさせる。

アリビデイル王国の軍人であるライアンがサラに近づいてきたのは、一年ほど前のことだった。

ダナの入院する病院を訪れた帰り。

帰路を急ぐサラを呼び止めたのがライアンだった。

< 298 / 564 >

この作品をシェア

pagetop