空をなくしたその先に
一瞬足を止めてしまったほど、似ていた。

死んだヘクターに。

ヘクターを愛していると自覚したのは、
いつのことだったのか思い出すこともできない。

姉のように面倒をみていたはずが、いつの間にか異性として意識し始めていた。

彼が一人前になったら、

隣に並ぶことができるのではないかと言い寄る男たちをはねつけ続けて年を重ねて。

ようやく並んでもおかしくないと思えるようになった頃には、彼の目は全く違う方に向いていた。

赤い髪のパイロット。

同じ五歳差でも、上か下かでこうも変わるものか。

周囲の目を気にすることなく、彼の胸に飛び込めた彼女が羨ましかった。

自分の気持ちを押し殺すことには慣れている。

黙って二人を祝福して、相談されれば真摯な答えを返して。

それで満足だと、思いこもうとしていた。

ヘクターがいなくなった後、ダナまで失いたくないと思ったのも事実だった。

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