空をなくしたその先に
20.縮められない距離
列車の旅といえど、今までに比べたら気楽なものだ。

食堂車まで数車両移動して、座っていれば食事はすべて運ばれてくる。

自分では何もやらないと豪語するだけあって、イレーヌは何人もの使用人を伴っていた。

必要最低限の停車ですむように、運転手は三人。

燃料の補給時以外は、常に走り続けることになる。

身の回りの世話をするためのメイドが五人に、

車両内の掃除などの作業に当たる人間が二人。

さらにイレーヌの秘書に調理人。この全員が兼護衛なのだという。

ひょっとするとディオの父親が公務で旅に出る時よりもはるかに大人数かもしれない。

カーマイン商会の財力を見せつけられたような気がする。

食堂車に並べられているレースのクロスがかけられたテーブルも椅子も、

庶民にはとうてい手の届かない高級な品だ。

ディオにとっては居心地の悪いこの状態もフレディはむしろ楽しんでいる様子で、

給仕にあたったメイドを自分の客室にひっぱり込もうと熱心に声をかけている。
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