空をなくしたその先に
フレディをふりきって与えられた部屋へ入ったダナは、
扉を後ろ手にしめたまま窓の外を流れていく景色に見入っていた。

真っ暗な中、流れていく家々の明かりを見つめながら、首から下げたエメラルドが重さを増したように感じられる。

自分だけ生き残ってしまった罪。

爪が食い込むほど手を握り締めてみても、血が滲むほど唇を噛み締めてみても、胸の痛みは消えてくれようとしない。

このまま一人でこの部屋で過ごすのは耐えられそうもない。

彼女は一度閉じた扉をもう一度開く。

通路を通り抜けて、ディオの部屋の前に立った。

数回、ノックするためにあげた手をおろす。

迷って、迷って、それから静かにドアを叩いた。


「開いてるよ」


てっきりメイドだと思って、ディオはふりむきもせずに入室を許した。

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