空をなくしたその先に
ドアが開かれて、閉じる音がしたのに、それ以外は何も聞こえてこない。

半分だけ身をよじってみると、ブーツを脱ぎ捨てたダナがベッドの上で膝を抱えていた。


「ダナ?」


慌てて椅子から滑り降りると、


「ここにいてもいい?」


とだけ返ってきた。


「一人でいたくなくて」


と、脆さを抱えた笑顔で言われてしまえばディオに反対する理由はない。

けれど。


「フレディのところに行かなかったんだ?」


隣に腰かけながら、出るのは皮肉めいた台詞。

こんなことを言おうとしていたはずではないのに。


「フレディ……ね。

ヘクターの知り合いだったって言うし、悪い人ではないと思うのだけど」


昨夜二人で話していたのは、そのことだったのかとディオは初めて知る。

二人とも昨夜の会話の内容は、ディオには教えようとしなかったから。

ダナの視線が落ちる。


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