空をなくしたその先に
「それに食事もものすごく贅沢よね。

あんなにこってりソースのかかったものばかり食べて、よくあの体型保っていられるわよね、
イレーヌさん」

「おいしくなかった?」

「おいしいとは思ったけど、全部あんなに味を濃くしなくったっていいじゃない。

お腹すいているのに胸につかえて食べられなかった」


枕に顔を埋めたまま、ダナは足をばたばたさせる。


「じゃあ何食べたかった?」

「パンとチーズと林檎でもあれば十分。

今夜、お腹すきすぎたら、あれ食べるしかないかしら」

「あれ?」

「携帯食よ。まだ鞄の中に入ってる」


あれか、とディオは苦笑いした。

一度だけ口にしたが、確かにひどい味だった。

あの時は水で流し込んで、ダナに非難の目で見られたっけ。

それから慌ててダナの分の水を汲みに行ったのだった。

もう一度寝返りをうって、ダナは天井を見上げる。
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