空をなくしたその先に
「あの子たちったら、何をしてるというのかしら。
せっかく一つのベッドにいるというのに」


贅沢な車両の中でも一番贅を尽くした部屋の中、

イレーヌが非難がましい声をあげて耳から受信機をはずした。


「『そういうこと』を思いつかないほど、子どもなんだろうさ二人とも」


当然のような顔をしてこの現場にいあわせたフレディは、
口元だけで笑みを作りながら酒瓶を取り上げた。

立場を考えてのことか。

単に好みではないか。

それとも意識していないところで、互いを大切に思いすぎているか。

理由なんていくらでも考えつく。


「若いから期待していたのに残念ですこと」


受信機を置いてフレディの側に近づいてきたイレーヌの腕が、フレディの首に絡みつく。

真っ赤に塗られた爪に、何重にも巻かれた真珠のブレスレット。

いつだって身だしなみは忘れない。

後は寝るだけだというのに、顔に施された化粧を落とす気配もない。

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