空をなくしたその先に
「なりますとも」


ほんの少しだけ、イレーヌはドレスの裾を持ち上げて見せた。
足首を覆っているのは、ドレスには不釣り合いなごついブーツ。

その先に黒のパンツが続いている。


「このスカート、取り外しできますの」

「なら、最初から外しておけばいいじゃないか」

「これは美意識の問題ですわ」
「これだから女ってやつは」


嘆息してフレディは、サロンカーの中をぐるりと見回した。

窓の外を流れていく景色は、先ほどから何も変わっていないように見える。

実際にはかなりのスピードで移動しているのだが。

今この車両にいるのは、イレーヌとフレディの二人きりだ。


「あの子たちはどうしていますの?」


カップに砂糖を放り込みながら、イレーヌは口を開く。


「あっちでダナがディオに玉の突き方教えているよ」


無造作にしめしたのは、前方の娯楽室の方。


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