空をなくしたその先に
「気になるのでしょう?」


全て見通しているような笑みをうかべて、イレーヌはフレディを招く。


「ならないわけないだろ」


イレーヌと向かい合うように腰を下ろして、フレディはポットを手に取った。

やや濃い目の紅茶をカップに注いで、たっぷりのミルクを追加する。


「さんざん話に聞かされていた娘だぞ?

気にならない方がどうかしてるだろ」

「実物に会ってみてどうでしたの?」

「そうだな……」


手にしたカップに、視線が落ちる。

列車の振動に合わせて、表面がゆらゆらとゆれていた。


「いい子だと思ったよ。

あいつが好きになった理由がわかるような気がした。

だけど」


言葉を選びながら慎重にカップに口をつける。


「ディオを護ろうと必死になっているのが、痛々しい気もしたな。

最初なんて俺に警戒心むき出しで。

護衛なんて女の子一人に任せるのは荷が重いだろ」


最後の言葉は、ため息と同時に吐き出された。


< 319 / 564 >

この作品をシェア

pagetop