空をなくしたその先に
なぜビリヤードにつき合うことになったのだろう。


「もっとちゃんと球見てって言ってるでしょ!」

「見てるよ!」


すこん、となさけない音をたてて球が転がる。


「うーわー、ホントにちゃんと見てる?」

「見てる見てる!」


あきれた声をあげたダナは、球を拾い集めるときちんと並べた。

かまえて、うつ。

ディオの時とは比べものにならない音がして、台の上の球がはじける。


「君にはかなわないよ」


肩をすくめて、ディオは壁にもたれた。

体を動かすのは苦手だ。

球を並べて、うって、拾ってを繰り返しているダナをぼんやりと眺める。

やがてそれにも飽きたダナがやってきて隣に並んだ。


「退屈ね」

「……そうだね」


お互い口を開きかけては閉じる。

何か話さなくては、という義務感にも似た何かが二人の間を行ったり来たりしている。


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