空をなくしたその先に
「ティレントまで、あとどのくらい?」

「二日か、三日かな」

「ビクトール様……皆、無事かしら……王都で会おうとは言ったけれど」


ダナの顔を掠める焦りの色。

イレーヌの情報網を使っても、アーティカの消息は入ってこなかった。


「無事だよ、きっと。

アーティカの強さは君が一番知っているだろ?」

「そうだけど」


ディオの言葉は、気休めにもならない。

ダナは黙り込んだ。


確かにアーティカの兵力は強大だ。

でも、戦場ではそれだけではないことを知っている。

二年前にだって大敗しているのだから。

壁を伝ってダナの手を探り当てたディオの手が、力づけるようにぎゅっと握りしめる。

いつからだろう。

ぎゅっと握り返しながらダナは思った。

最初は頼りないと思っていたのに。

気がついたらこんな時には、どちらからともなく手を伸ばしている。
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