空をなくしたその先に
昨日とは全く違う重苦しい雰囲気の夕食が終わる。

フレディに言われて、ディオはコートだけはおって、そのままサロンカーに向かった。

サロンカーではイレーヌが待ちかまえていた。

黒いドレス姿のイレーヌだったが、メイド二人を従えて厳しい顔をしている。


「そろそろですわよ?」


かけられた声にフレディは頷く。

イレーヌは、サロンカーとその前の車両の連結部分の扉を開いた。

飛び込んできた風が髪を乱す。
今夜は月もごく細い。

民家もないあたりだから、外は真っ暗といってもいい。

スカートの裾をはためかせながら、イレーヌはフレディを見つめた。


「列車、止めます?」

「いや、少し遅くしてくれればいい」


いけるな、というフレディの言葉にダナは肩をすくめ、ディオは目を丸くした。

飛び降りろということだろうか。

イレーヌが通話装置越しに、速度を落とすよう命令する。

列車の速度が遅くなった。


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