空をなくしたその先に
「行け!」

「無理だってば!」


フレディの声に背中を押されても、飛び降りることなんてできない。

手すりにつかまったまま、おろおろしていると、手すりから手をひきはがされた。

次の瞬間、抱え込まれてディオは宙にいた。

と思うと激しく地面にたたきつけられる。

そのままごろごろと地面の上を転がって、とまった時にはディオが上だった。

ダナの胸に顔をうめる形になる。


「早くおりなさいよ!」


下からわめかれて、ディオは頭をふりながらダナから離れた。

ぐらぐらする。

転がった時にどこかにぶつけたのだろうか。


「やればできるじゃない」


回りに人家すらない場所。

ダナの顔もよく見ることができない。

イレーヌの汽車がスピードをあげながら遠ざかっていくのは、音でわかった。


「俺も年だなあ」


ぼやきながらフレディが這ってきた。


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