空をなくしたその先に
昨晩、メイドという建前のメリッサに通信機を使わせて、アーティカとの連絡を試みたのだ。

飛行島クーフが攻められたという噂は聞いていた。

だからビクトールへの連絡ができると確信していたわけではない。

彼が使った通信コードは二年前、私的に使用してかまわないコードだからとヘクターに教わっていたものだった。

そのコードが今でも有効な保証はなかった。

クーフが攻められた緊急時に、私的コードを受け付けてもらえるとも思えなかった。

それでも、イレーヌの偵察部隊だけでは心許ない。

最初から安全な旅を期待していたわけではないが、何かあると勘のようなものが働いた。

当初の予定になかったアーティカへの通信を試みたのは、この勘のためだ。

ビクトールへ援護の依頼ができるならばと、わずかな望みにかけた。

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