空をなくしたその先に
車には他にも何人か乗っているはずだ。

こうなったら、近づかれる前に何とかするしかない。

闇の中気配を探る。

手のひらにかいた汗で、銃が滑り落ちそうになる。

それを押さえ込んで、ダナは目をこらした。

なんとしてもディオだけは逃がさなくては。

ディオは頭をふりながら、車に寄りかかるようにして座った。


「一応俺も銃は持っているんだけどね」


気がついたらすぐ隣にルッツがいた。

同じように車に背をつけている彼の手には銃。


「動かない的にも当たったためしがないんだよなあ」


ぼやきながらも、彼の目は鋭く暗闇を見据えている。

慌ててディオも銃を抜いた。

弾は装填してある。

使い方は知っている。

ただ、撃てばいい。

けれどいつ、どうやって撃つ機会をはかればいいのだろう。


静かなダナの声が、ディオを現実に引き戻した。


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