空をなくしたその先に
守られるのはしかたない。

かばわれるのも当然かもしれない。

けれど。

この場に三人を残して、自分だけ逃げるなんてできない。

そう思っているのは、ディオだけのようだった。

「ディオ。

今お前が捕まったり殺されたりするのが一番困るんだよ。

そのくらいわかっているだろう?」


フレディが、銃を持った方の手でディオの肩を叩いた。

負傷している左手は、あげることすらできないから。

銃を持たせたくせに。

ナイフだって渡したくせに。

フレディの言葉に、反論しようと口を開きかけた時だった。

耳元を熱い何かが走り抜ける。
どろりとしたものが肩に滴り落ちた。

弾が耳をかすめたのだと理解するまで数秒かかった。

痛いというより熱い。

じんじんとする耳。

胃袋をぎゅっと捕まれたように感じた。


「走れ!」


ルッツの声に、考える間もなく身体が動いた。

右手に銃を握ったまま、勢いよく走り出す。

後ろの方では、銃声の応報が始まっていた。
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