空をなくしたその先に
数回転がって、うちつけた膝を呪いながら、立ち上がりかけた時だった。

耳がかちゃりという金属音をとらえた。

とっさに前に飛んで、地面にふせる。

ディオの今までいたあたりの地面に、何かが激突するのがわかった。

銃はどこだ。

暗闇の中では何も見えない。

必死で地面の上を撫で回し、銃のありかを探る。


「そこまでだな」


知らない声が耳をうった。

枯葉を踏む足音が近づいてくる。

額に押し当てられる冷たい感触。

おそるおそる視線を上げていくと、正面から銃口がにらみつけていた。

ほとんど真っ暗な中、ごくごく細い月の光でもそれが銃口だと確認できる。


「機密書類とやらを持っているのはあんたか」


声の主はまだ若いようだった。
ディオは黙っていた。

何を言っても命取りにしかならない。

男はいらついたように、銃口でディオの額をこづいた。

ディオの背中を冷たい汗が流れ落ちる。
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