空をなくしたその先に
「殺してからゆっくり探すという手もあるんだぜ?」


男はゆっくりと言う。

ディオの反応を楽しんでいるかのように、たっぷりと間をとりながら。


「違っていたら違っていたでいいんだけどな」


男の口調は書類を持っているのが今目の前にいる相手であることを確信していた。

どうしよう。

恐慌をきたす、とはきっとこういうことをいうのだろう。

どうしたらよいか見当もつかない。

放り出してしまった銃は見つからないままだ。

ナイフは腰の後ろに隠してある。

目の前の男にナイフで勝てるだろうか?

そんなことを考えながらも、選択肢がないこともわかっていた。

目立たないようにそろそろと手を後ろに伸ばす。


「うわあああああああ!」


声と同時に男に飛びかかった。
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