空をなくしたその先に
「いいかげんにしろ!」


今度は背中を蹴りあげられた。

せきこむディオに対し、男は容赦なく蹴りを入れ続ける。

落としたナイフは遠くへととばされ、

ディオにできるのは、丸くなってせめて腹部をかばうことだけ。

圧倒的な暴力にさらされるのは初めてのことだった。

口の中には、鉄の味が広がっている。

何度か目に蹴り転がされて、ディオは死を覚悟した。

せっかく皆が逃がしてくれたというのに。

頭が白くなる。

このまま気を失ってしまえたら、楽になれるのかもしれない。

意識を手放そうとした時だった。

放り出した手が何かを捕らえた。

自然物ではない冷たい感触。

また蹴りあげられながら、ディオはそれを引き寄せて握りしめた。

使い方はわかっている。

頭の中で手順を確認する。

チャンスは一度だけ。

それを外してしまったら、本当に殺されてしまう。

ぜい、と息をはいてディオはその瞬間を待った。
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