空をなくしたその先に
23.ビクトールとの再会
何度も転びながら、ルッツの指示した方向へディオは走り続けた。

傷つけられた体中が痛む。

蹴りは容赦なく顔にも入っていた。

腫れた瞼が視野を狭くする。

追っ手のことなど考えている余裕はなかった。

アーティカの部隊に合流する。
ディオの頭を支配しているのはそれだけだった。

例外は、銃を落とさないようにと手を必死に握り締めておくことだけ。

エンジン音を聞きつけてディオは足をとめた。

ルッツの言っていた別動部隊だろうか。

アーティカの兵士か否かを確認することなどまったく思いつかないまま、近づいてくるライトの方へと歩いていく。

やってきたのは五台。

途中で戦闘があったのか、そのうち一台は破損していた。

ディオの目の前で、車はとまった。


「殿下!」


先頭の自動車から飛び降りたビクトールは、確かにディオをそう呼んだ。
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