空をなくしたその先に
「いや……もう少し行ったところ。今ひいた死体は……たぶん、僕が」


最後まで続けることはできなかった。

殺した、という言葉を口にすることそのものが恐ろしい。

まだ手にこびりついたままの血のあとが、降り注いできた血の生暖かさを思い出させた。

痛ましそうな視線をディオに投げかけると、ビクトールは無造作な口調で前進再開を命令した。

逃げている時はずいぶん長い間走ったと思ったのに、

ディオが皆を残してきたところはそこからさほど遠くなかった。

ごくわずかな光がちらちらとしている。

ビクトールが最初に飛び降りた。

続こうとするディオを、両脇を固めた兵士が押さえつけた。

ダナが近づいてくる男に気がついたのは、その直後だった。

フレディの手当をするために、
ほんの少しだけつけた明かりを見つけられたかとどきりとする。
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