空をなくしたその先に
「誰かくる。動かないで」


応急手当を終えたフレディを地面に横にならせておいて、ダナは銃を確認した。

残りの弾の数はそれほど多くない。

敵の数を確認しようと、全神経を集中させる。


「俺、弾切れ。ダナは残ってる?」

「これでおしまい」


最後の弾薬をルッツに放って、ダナは膝をついた。

習い覚えた通りの体勢で、銃を構える。


「撃つな、俺だ」


聞きなれた声がした。

何年もの間、その声を聞いてきた。

一度に緊張が解けた。


「だ……団長!……ビクトール様!」


飛び込んだ胸は大きくて温かかった。

子供の頃いつもしていたように、しがみついて顔を埋める。


「頑張ったな。王子は無事だぞ」


頭をなでる大きな手。

子どもの頃から変わらない大きさに、安心しきって涙がこぼれた。


「本当にすまなかった。

まさかサラが情報を流していたとは、思わなかったんだよ」


続くビクトールの言葉にただ首を横にふる。

王都にはまだたどりついていないが、帰るべき場所にたどりついたような気がした。
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