空をなくしたその先に
寝つくまで何時間でも髪をなでて、時には彼の腕の中にもぐりこんできて抱きしめてくれた。
半ば癖のようにベッドの半分を明け渡した隣を見下ろしても、今は空っぽで冷たいシーツに皺がよっているだけだ。

どれだけ彼女に助けられていたのだろうと、今さらながらに自問する。

諦めてディオはベッドを抜け出した。

長い廊下をあてもなく歩き始める。

眠ることはできなかったものの、薬が効いているのか痛みの方はだいぶましになっていた。

フレディの様子を聞きに行ってみようと思い直したのは、

ほとんどの扉が閉じている中、細くあけられたからこぼれる光を捕らえたときだった。

確かフレディが治療を受けている部屋だ。

近くまで来ると中から声が聞こえてきた。

「さっさと寝なさいって言ってるでしょ!

あなた怪我人の自覚あるわけ?」

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