空をなくしたその先に
「キスしてくれたら、おとなしく寝るけど?」

「さっきからキスキスうるさいわね!

助けてくれたのは感謝するけどそれとこれとは別問題よ!

あたしが寝なさいって言ったら寝なさいよ!」


扉を通り越し、響いてくるダナの声。

胸に針を突き立てられたような気がした。

フレディは彼女をかばって怪我をしたというのに、ディオは何もできず逃げただけだった。

人としての器の差を思い知らされる。

ひょうひょうとしたフレディの言葉が、ディオに追い打ちをかけた。


「それってキスしてくれたうちに入らない」

「うるさい!

おでこで十分!

さっさと寝なさい!

明日ひどくなっても知らないんだから!」


がたん、と椅子を引く音がした。

勢いよくドアが開いて、中からダナが出てくる。

顔が赤くなっているように見えたのは、気のせいだろうか。

ディオに目をとめて、ダナはぎょっとしたように立ち止まった。

< 354 / 564 >

この作品をシェア

pagetop