空をなくしたその先に
「どうしたの?その顔……」


ここまでは別々の車で来たし、
ダナとビクトールが再会した時にはディオは車を降りることを許されなかった。

宿に着いてからも別々の部屋。
別れてから顔を合わせるのは初めてだった。


「一人こっちに来てたんだ。逃げようとしたんだけど……」


思い出す男の声。

手に残る肉を斬る感触。

こびりついて落ちない血。

そこから後は続ける必要はなかった。

すべて理解したという顔で、ダナが手をさしのべる。


「外へ、行く?」


ダナにうながされて、ディオは一歩踏み出した。

手をつないで、宿の入り口から外に出る。

夜の風は冷たかった。

思わず身をふるわせる。


「ごめんなさい」


入り口の階段に腰かけて、最初に口を開いたのはダナだった。


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