空をなくしたその先に
ひときわ高いビクトールのすぐそばで、赤い髪の持ち主がディオを見上げていた。

彼女に目をとめて、動けなくなる。

全力でディオを守り続けてくれた彼女。

この扉を入ったら、もうこの先彼女と接することはない。

ディオとダナの視線が交錯する。

ダナが右手を胸のところまであげた。

目立たないように小さく手をふってみせる。

それに口元だけの笑みを返しておいて、ディオは正面に向き直った。

大きく息を吸い込んで一歩踏み出す。

彼が子どもの頃から王宮に使えていた侍従長が、うやうやしく頭を下げた。

「よくお戻りになられました」


目元に涙をにじませながら、彼は先に立ってディオを導く。

最初は公的な間で顔を合わされるのかと思っていたのに、いきなり王妃の私的な居間に通された。

待っていた王妃エレノアは、ディオを見るなり駆け寄ってきて抱きしめた。
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