空をなくしたその先に
「ディオス……ディオ……」


最初は正式な名で、ついで愛称で呼んで背中に回した腕に力をこめる。

しばらく会わない間にずいぶんやつれていた。


「あと一日早ければ間に合ったものを……」

「もうしわけありませんでした、母上」


父親の容態については、ビクトールから聞かされていたから覚悟はできていた。

それだけを何とか搾り出して、ディオは母親からそっと身をひく。

彼女の身をつつむのは黒い喪服。

ちょうど昨日の今頃、国王ディオゲネス三世は息をひきとったのだという。

その父の遺体は、今は王宮にはない。

防腐処理を施すために運び出されている。

マグフィレット王国の慣習で、国王の遺体は防腐処理を施された上で、

半年にわたって定められた場所に安置されることになっている。


半年の間は国民誰もが花を捧げることを許される。

その期間が終わり国王の葬儀を行った後、新しい王が即位することになる。

< 363 / 564 >

この作品をシェア

pagetop