空をなくしたその先に
実際に王位を奪おうとした三男は、表沙汰にならぬうちに密かに処刑されている。

その手はずを整え、病死として発表したのはフェイモスだった。

わざわざ反逆者の汚名をきることもない。

正直に言ってしまえば、フィディアスのことは愚かだと今でも思っている。

もっとも彼の上にはさらにフェイモスが控えていたのだから、焦るのもしかたのないところだったのかもしれないが。

時期がくるまでに自分の手腕を家臣の目に明らかにしておけばいいと、宰相という地位にとどまって腕をふるうこと数十年。
病弱なはずだった兄は、寝たり起きたりしながらも七十まで生きた。

頼りないながらも一応の後継者を残して。

王位にこそつけなかったが、今の状態にはしごく満足している。

国の実権は彼の手にあるのだから。


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