空をなくしたその先に
若い次期国王も彼の手がなければ、国を治めていくことなどできないだろう。

国王を軽んじるつもりもないが、

必要以上に口を挟まれても困る。現在の体制でうまく回っているのだから。

もっとも、ディオも積極的に政治に関わろうとはしないだろう。

彼の好奇心の大半は違うところに向けられている。

どちらかというと学者的気質な甥のことを、フェイモスはよく理解していた。


「何はともあれ王子が無事でよかった。

ところで、アリビデイルが侵攻の準備を進めているそうだ。

戻ったばかりのところすまないが、いつでも出られるようにしておいてくれ」

「先日の戦闘でこちらの被害も甚大なものでしてな。船の修理が間に合いますかどうか」

「まったくお前ときたら」


肩をすくめるビクトールに、書類をたたきつけておいてフェイモスは笑った。
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