空をなくしたその先に
25.ゆれる心
リディアスベイルの艦長室、
届いた報告書を読み終えて、
サラは目元をおさえた。

艦長室といっても、他の部屋とそれほど変わった作りというわけではない。

書類や地図を広げるための大きな机が置かれているのと、その分部屋が多少広いくらいのものだ。

カーマイン商会に保護された王子を奪おうと、
アリビデイルと契約を結んでいる傭兵部隊が動いたという話は聞いていた。

報告書によれば列車を停止させることには成功したものの、手ひどい反撃をくらったということだ。

護衛用の兵士はほとんど乗っていないという情報に誤りはなかったが、

イレーヌ・カーマインの使用人は全員がかなりの戦闘力を持ち合わせていたようだ。

イレーヌ本人も機関銃を手に大暴れしたらしい。

さすがは死を商う女ということか。

王子の誘拐することはできず、書類を奪うこともできず。

何名もの死者を出して、作戦は失敗に終わった。

別の傭兵団の団長から話をもちかけられた時、断っておいて正解だったと思う。

今サラの手元にいる人数は、それほど多くはない。



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