空をなくしたその先に
報告書を机に投げ出して、腕の中に顔をうずめた。

離れることを決めたとき覚悟はしたはずなのに、胸のつかえは取れそうもない。

サラは、生まれたときからアーティカで育ったわけではなかった。

戦災孤児だった彼女がアーティカに拾われたのは、偶然の結果にすぎない。

王室の運営する孤児院に送られる可能性もあった。

サラを拾ったのはまだ結婚前だったダナの母親で、中心になって面倒をみてくれたのは、その母親。

つまりダナの祖母にあたる女性だった。

傭兵という職業柄、アーティカには片親を失った子どもや孤児も多い。

孤児となった子どもは、誰かの家に引き取られる。

サラのように外部の子どもが引き取られることも珍しいことではない。

引き取られたからといって、アーティカで傭兵となることを強制されるわけではなかった。

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