空をなくしたその先に
返しきれない恩を仇で返している。

彼の期待に応えたかったというのに、このままいけば、アーティカと対戦せざるをえない。

恩人であるビクトールと、複雑な感情を抱く彼女と、双方を相手にすることになる。

ビクトールの思考回路は全て飲み込んでいる。

きっと勝機は見いだせるはず。

そう自分を奮い立たせてみても、出てくるのはため息ばかりだ。


「おいおい、辛気くさいぞ。その格好」


頭の上に手がのせられた。


「……ノックくらいして」


顔を上げるまでもなかった。

艦長室にノックもせずに入り込む図々しい男など、一人しかいない。


「したさ。返事がなかったから勝手に扉をあけただけだ」

「それってどうなの」

「部屋の中にいたんだからかまわないだろ」


かまう。

おおいにかまうのだが、ライアンはさっさとベッドに腰を落とすとサラを手招きする。

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