空をなくしたその先に
「なあ、

アーティカの男はバカばかりなのか見る目がないのかどっちなんだ?」


サラを腕の中におさめて、ライアンはたずねた。


「どういうこと?」

「サラみたいないい女を、今までほっとくなんてさ。

バカか見る目を持ち合わせてないかどっちかだろ」


いい女、か。

言い寄ってくる男はそれなりにいたけれど、面と向かってそんな台詞をはかれたことなどない。

世辞だとわかっていても、そう言われて悪い気はしない。


「あら?言い寄ってくれる相手がいなかったわけではないわよ?」


ライアンの腕の中で、サラはほんの少しだけ背をそらす。

下から見上げた彼の顔はどこか遠くを見つめていた。

愛している相手ではないけれど、誰かの腕の中にいるのも悪くはない。

この頃そう感じる。

アーティカを離れて一月とたっていないというのに。

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