空をなくしたその先に
26.せまりくる足音
王都に戻って三日。

真夜中近くにディオは、ひそかに叔父の家を訪れた。


「叔父上、お願いがあるんだけど」


フェイモスには息子が二人いるが、
今は二人とも外交官として他国に赴任しているため、

夫婦二人と使用人のみが屋敷にいる。

ディオはもう寝室に入ったという彼の妻が、あわてて出てこようとするのをとめた。

勝手に深夜に押し掛けてきたのはディオのほうなのだから。

フェイモスは夜着の上にガウンをひっかけただけ、という気楽な格好で王子を出迎えた。

ディオの方にもそれをとがめる気は最初からない。


「お願い、と言われてもできることとできないことが」

「わかってるよ。

できないのなら、他の手を考えてほしいんだ。

叔父上ならこういうことには慣れているだろうし」


ディオの頼みを聞いたフェイモスは渋い顔になった。


「他国の領域になりますからな……まあ手は尽くしましょう」

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