空をなくしたその先に
ディオは政治向きのことはすべてフェイモスにまかせ、自分は研究室に閉じこもっていた。

集められた学者たちとともに一日の大半を研究室で過ごし、

寝食は完全に忘れ去っていて時にはそのまま徹夜での作業になることもある。


「面会の方がいらしていますが」


そうディオが告げられたのは、一息入れて昼食にしようかと手をとめた時だった。

徹夜明けの上、昨日の夜から何も口にしていなかった。

追い返してもよかったのだが、会いにくる人間に心当たりなどない。

首をかしげながらディオは応接室に入った。

腰かけていた相手が、扉の開く音と同時に立ち上がる。


「ダナ……」


名前を呼んだきり、あとを続けることができない。

最後に会ったのは一月ほど前か。

会ったと言うより目があったというだけ。

ディオが王宮の階段をのぼっていたあの時。

あれが最後だった。

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