空をなくしたその先に
「ひさしぶりね。ちゃんと食べてる?」


右手を差し出しながらダナは言った。


「食べているよ。

どうしてここに僕がいるってわかったの?」


嘘をはきながら、ディオはダナの手をとった。


「あちこち聞き回って……最終的にビクトール様にお願いして」

「そう……」


最後に顔を見たときには、わずかに残っていた擦り傷のあとも今はすっかり消えている。

首に残されていた指のあともなくなっていた。

以前はシャツ一枚だったのが、秋らしい深い色のジャケットを重ねて着ている。

スカートではなく、パンツに膝丈のブーツを合わせているのは、初めて会った時と変わらなかった。


ためらいがちにダナは口を開いた。


「こんなところにいるなんて……あの研究……続けているの?」

「……うん」


その返答に、彼女は目をふせる。


「……ディオ」

「なに?」

「……あたしたちから……空を……奪わないで」


< 394 / 564 >

この作品をシェア

pagetop