空をなくしたその先に
唇をかみしめながら、一言一言区切るようにダナは言った。


「そんなことにはならないよ。約束する」

「……ありがと」


どこか無理をしているような笑顔に、ディオはとまどった。


「あたしね、明日出発なの」

「……出発……?」

「アーティカにも出撃命令が出たから」


何でもないことのようにダナは笑顔のままだ。

ディオは頭を殴られたような衝撃を覚えた。

戦争になれば、彼女は戦場に行く。

わかっていたはずなのに。


「ちゃんとさよなら言ってなかったから。

行く前に言っておこうと思って」


どうして……彼女は笑顔を作ることができるのだろう。

少し無理をした笑顔だとしても、これから彼女が向かう先は、生と死が交錯する場所なのに。


「ダナ」


名前を呼んだディオにかまうことなく、彼女は早口に続ける。
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