空をなくしたその先に
「あたしがせめて副官くらいの地位だったらよかったのにね。
サラ様はしょっちゅう王宮に行ってたもの」


冗談めかしてサラの名を口にして、ダナはディオの腕をほどいた。

二人の間にある壁は高くて厚い。

乗り越えることなんて想像さえできないほどに。

旅の間は忘れていた身分差を今痛感させられている。

わかっていたのに、旅の間は目をそらしていた事実。

せめて、もう少し身分が高かったら。

王子などでなかったら。

旅の間に結んだ絆をほどく必要なんてないのに。


「僕が会いに行く。だから」


不可能なことを口にしているとわかっている。

即位したら勝手に王宮を抜け出すことなんてできない。

それが理解できないほど、二人とも幼いわけではない。

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