空をなくしたその先に
「……またね、て言えばいい?」

「……そう言ってほしい」


またね、ディオの耳にささやかれた言葉は、心の奥底までしみこんだ。

「王都での休日なんて初めて。
おいしいものたくさん食べておかないとね」

とびつくようにしてディオの頬に唇をあてて、彼女は勢いよく飛び出していく。

鮮烈な赤い色だけがあとに残された。

ダナが研究所を訪れてから一週間後。

ついにマグフィレット軍とアリビデイル軍は空で激突した。

焦るディオをよそに、戦局はかんばしくなかった。

センティア王国は国境を突破され、じりじりと王都へと侵攻を許している。

フェイモスは援軍を送ることを考えたが、

陸路で経由しなければならない国の了承を得ることができず、空での勝利だけが状況を打破する手段だった。
< 398 / 564 >

この作品をシェア

pagetop