空をなくしたその先に
「叔父として言っているのだ!」


フェイモスの拳がテーブルをうった。

あらかじめ用意されていたティーセットが、とびはねてかちゃかちゃと不愉快な音をたてる。


「この国は王を失ったばかりで……

その状況下で次の国王自ら戦場へ出るなど……

自分より若い親族の数を減らしてたまるか!」


宰相としての言葉と、叔父としての言葉が入り交じる。


「でも叔父上」


ディオはフェイモスを見つめた。

その目に静かな決意の色をうかべて。


「あがってくる報告書では、単なる小競り合いかもしれない。
出撃のたびに奪われる命の重さは、はかることなんてできないんだ。

そんなの叔父上だってわかっているだろうけれど」


はじめて見た。

人がその命を奪われる瞬間を。

目の前で頭を撃ち抜かれたフレディの従者。

飛び散った血の色、臭い。

ディオ自身が命を奪った名も知らぬ男。

ごくわずかな月明かりにうかんだ驚愕の表情。

倒れていくゆっくりとした動き。

目に焼きついて離れない。

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