空をなくしたその先に
自分の上には飾りものの王がいればそれでいいと。

それで長年の間うまくいっていたのだ。

それを甥に悟られているとは、思ってもみなかった。

自分の研究のことしか頭にないと思っていたのに。

「父の時代もそうだった。

僕はそれでいいと思っている。
父もあなたを信頼してまかせていたのだから」


ディオの口元に苦い笑みがうかぶ。

長年の間、お飾りの王に甘んじてきた父。

使えない王とかげでそしられても、耳に届かないふりをして。
それができたのは弟に絶対の信頼をよせていたからだ。

凡庸。

それを貫き通すのもある種の才能だとディオは思う。

留学する前は、想像さえしていなかった。

「でも、これの制御は僕にしかできない。

だから僕は、自分で行こうと思う」


ディオの決意をフェイモスは理解した。

理解せざるをえなかった。


「危ないところには行かないように。

お前までいなくなったら、エレノア殿が悲しむぞ」


瞬時に叔父の顔になって、フェイモスは承諾した。

戦場に出るのだから、危くないところなど存在しないというのに。

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