空をなくしたその先に
「新しい機体で飛んでもらうぞ。後ろにもう一人乗せて」

「ビクトール様……、あたしは」


団長の命令は絶対だ。

それでもヘクター以外の人間に後ろをまかせるつもりなど、ない。

今ルッツと整備していた機体も一人乗りのもので、

それで出撃した実績はまだないが、十分な成果をあげることができると確信してる。


「おまえに飛んでもらわなきゃ困るんだよ。

どうしてもおまえがいいとわがまま言う王子がいてな」

「……王子?」


王子などと呼ばれる人間は、一人しか会ったことがない。

でも彼がここにいるはずなどない。

今頃は国で、次の王として立つための準備にいそしんでいるはずだ。

大きく息をはいて、ビクトールは無造作に部屋のドアを開けた。
「うちで一番の……いや、マグフィレット一のパイロットです。殿下」


ダナを部屋の中央へと押しやる。


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