空をなくしたその先に
相変わらず一人では乗り込むことすらできない。

ベルトで座席に身体を固定する。

耳の奥に自分の鼓動が響いている。

ダナは平然とした様子で、ディオの前の席に滑り込んだ。

迷うことなく起動スイッチをいれ、レバーを押し上げる。

すべてのランプが正常に点灯しているのを確認して、ダナは操縦桿をひいた。

勢いよく機体が飛び出す。もう一機続いた。


「ディオ!発射のタイミングちょうだい」


ディオは目の前の計測機をにらみつけていた。

機体の周囲の気象条件が、次々に表示される。


「ダナ、そっちはいけるか?」


通話装置越しに、もう一機のパイロットから通信が入った。


「ディオ、いける?」

「いつでも」


ディオの返答に、ダナはあらかじめ決めておいた合図を送った。

先方の機体が上昇する。

その機体から放出されたのは、訓練用の的だった。

ディオの指が制御装置の上を走り回る。
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