空をなくしたその先に
「寝られそうもないのでしょ?」


食堂に入って、軽食をとりながらダナはディオを見た。


「そうだね、それに食欲もない」


ディオの前にはホットミルクのカップだけが置かれている。


「食べなきゃもたないわよ?……はい、口あけて?」


思わず開けた口にちぎったパンが押し込まれた。


「なにするんだよ……」


一度口に入れたものを出すわけにもいかない。

もぐもぐと咀嚼して飲み込むと、今度はフォークに突き刺された野菜がつきつけられる。


「口あけなさい」

「……やだよっ」


ぎゅっと結んだ口の前で、脅すようにフォークが左右にふられる。


「最後の晩餐になるかもしれないぞ……じゃなかったしれませんよ、か」


どやどやと食堂に入ってきた男たちのうちの一人が、ディオに笑いかけた。

見覚えがある。

いかにも傭兵と言った風貌の柄の悪そうな男。

最初にこの船に乗り込んだ夜、食堂で会った男だ。


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