空をなくしたその先に
「そうなのよ、ジョナ。もっと言ってやってよ!」

「殿下なんて高貴な身分の人に、これ以上言えるかよ」


そうダナには言っておいて、ジョナはディオに向きなおった。


「寝られないようなら、コックが酒を」

「そこまで!お酒なんてだめ!
あんたたちもさっさと食べて部屋に帰りなさいよ!」


ダナに追い立てられて、ジョナたちはコックのいるキッチンスペースへと歩いていく。


「まったく……やあね」


憮然とした顔で、ダナは野菜を口に放り込んだ。

料理ができるのを待っている間、彼らはなにを話しているのか、テーブルをたたいて大笑いしている。

明日出撃だというのに緊張感など見受けられない。


「怖く……ないのかな」


ディオのつぶやきを、ダナはすくいとった。


「怖いわよ。あたしだって毎回怖いもの。空を飛ぶのは好きだけれど……ね」


その後、ダナはディオの口に食べ物を押し込むことなく食事を終え、二人はディオの部屋の前で別れた。

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